経済というのは金融や財政、あるいは税の収入や可処分所得の増減を考える学問だ。
ところが、学術的な統計からでなく、基本は人間の思いが社会規範となり、空気でできるというのだ。
渡辺 努著の「物価を考える」には「空気」によってインフレ、デフレが起こるというのだ。
過去を振り返ると平成のバブルと呼ばれた景気があり1989年の年末に株価が3万8916円だった。
バブルの崩壊だ。
同時期にベルリンの壁崩壊というドイツの東西が一つになり、世界的な冷戦状態も終焉した時期でもあった。
この時私たちは、反インフレは善という認識を持ち、企業は労働者に賃上げ自粛、消費者は企業に対して値上げの自粛を迫るようになった。
賃金や物価を据え置かれる共通認識が起こり社会はルール化されていくのである。
この「社会的な規範」が30年ものデフレの犯人で、自粛という人間の思いが空気になった。
実に面白い見方である。
そこから未来を見ると、昨今はハンドルを逆に切ったような空気ができているように感じる。
日本は食糧需給率が40%に満たないので、外国から輸入しなければならない。
海外の物価高により輸入インフレが起こっていると報道が騒ぐので国民も気づき始め、政府は最低賃金をあげようと方針を打ち出し時給1500円へと仕向けている。
「社会規範」が物価を決めるという。
著者の立場から考えると消費者は高くなることを受け入れ、企業は賃金を上げるために値上げをせざるを得なくなる状況になるだろうということだ。
歴史は繰り返すと言われるが、現実はホテルの朝食が3000円になり、ビジネスホテル宿泊費も1万5000円が3万円になってきている。
会社の近所の昼の定食は、以前は800円だったのが1150円になってきて、来年には1500円になるだろうと思う。
皆さんは、物価は人の思いからできた社会規範がつくっていると思いますか?

「物価は社会規範による」に思う
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