中村天風は人間の本質は「氣」だという。
「氣」とはエネルギーのことで、極微細なるものなので目に見えない。哲学的には「霊」と名付け、これが現れる現象をアイデアと言い、「氣」が動き出し、人間的には「心」という。
さらに天風は、「氣」が本質で「心」も「身体」も道具だと断言する。
例えば、花を見て綺麗だというが、人間で言えば良い肉体ということで、その根っこが心ということになる。
心の活動は「思うこと」と「考えること」のみで、それには二つあり、意識的と無意識的だ。
言い換えると、実在意識(形・感覚の世界)と潜在意識(肉体の建設者・人生の建設者)のことである。
この実在意識と潜在意識は相互作用を持っている。潜在意識が実在意識へ働きかけ具体化していくのである。
人生を支配する法則では、意識が重要なポジションにある。
意識には積極意識(建設的力)と消極意識(破壊的力)があり、潜在意識にはこの積極意識を蓄え実在意識へ具体化し、成長・向上する。
逆に雑念や妄念、恐怖のような消極意識は潜在意識に溜め込んではいけないというのだ。
人間と同じように宇宙にもエネルギーがある。これを宇宙霊と言い、哲学的には「精気」「霊氣」「先天の一気」と言って、これを受ける二次的な物質が「空気」「食物」「水」「土」「太陽光線」だ。
天風は「人間の健康も運命も心一つの置き所」と言い、ヨガの言葉にも「心の思考が人生を創る」というものがある。
この宇宙のエネルギーが「心」に伝達され、「延髄」で受けて神経系統に配られ肉体が具体的に行う。
ここで重要なのが意識であり、積極意識(建設的力)が発火装置になれば思いが成就すると言い切る。
「氣の存在」を人間は無邪気、無条件、観念的に理解するしかないのである。
「氣」は人間の心に入って観念となり、観念が思考となって一方は行動、一方は言葉になるのである。
物質を物理学的に言えば、すべての物質は素粒子からできていて、科学的には物質(過去と今)、哲学的には非物質・精神(今と未来)である。
天風はある時、目に見えない宇宙霊(氣)が宇宙の本質になっていることに気付いた。
そこで「運命も健康も自分の心の思い方、考え方で良くも悪くもなること」がすぐに分かったという。
天風の根本的な考え方が「この世の中は、苦しいものでもなく悩ましいものでもない。この世は、本質的には楽しい、嬉しい、そして調和した美しい世界なのである。」と結論づけた。
言い換えると「真」=誠、「善」=愛情、「美」=調和の世界と気付いたのだ。
故に天命は絶対的でどうにもならないが、宿命は相対的だから人間の力で打ち開いていくことができると言うのである。
宿命を拓くのに、一番大事なことは心を積極的にし、それを監督すること、そして心の中に感謝と歓喜の感情を持たせるように心掛けることだ。
それを習慣化し、さらに信念化することで思いが完成や成就に至るというのである。
最後に、人間の本来の面目は「食うことや、着ること、儲けること、楽しむこと、遊ぶことでなく創造生活すること」だと言う。
つまり、運命の向上、自他の幸福を念願することだと言う。宇宙のエネルギーを精気と言い、精気には積極精気と消極精気があり、人間の心の中の気分と常に同化的に働くので、プラスの精気を持ち、根本は「勇気」を以て宿命を変えられる「気」が本質だと言うのだ。
みなさんは万物の根源が「氣」という天風の気付き、いかが思いますか?