私は毎月一回経営者同士でのの食事会を二十年続けている。
弁理士、一級建築士、橋梁会社・運輸会社・元薬品会社の重役がメンバーだ。
今ならウクライナ侵攻のロシアの話、アメリカの利上げによる経済的な影響、コロナの影響や対応策などの具体的なこと、身近な話まで色々と話しながら、それぞれの会社の事情に合わせて話が弾む。
メンバーの中に早稲田大学ラグビー部の出身者がいて、「スポーツは人間形成に最高」という格言を言い出した。
陸上やゴルフ、相撲といった個人プレーのスポーツも良いが、グループでやるスポーツのフェアプレー精神こそ良いというのだ。
グループ競技でもサッカーは野獣のやる紳士のスポーツ、フットボールは野獣のやる野獣のスポーツ、ラクビーは紳士のやる野獣のスポーツと言うのだ。
ラガーの基本的精神には「一人はみんなのために、みんなは一人のために」、そして「ノーサイド」と言って試合が終わったら相手チームのメンバーとは仲間として向き合うというものがある。
欧米では試合が終わると一緒に食事して酒を飲む習慣がある。
元フランス代表の主将だったジャン・ピエール・リーヴが「ラグビーは少年をいち早く大人にし、大人にはいつまでも少年の魂を抱かせる」という言葉を残している。
15人が一人一人の役割に責任を持ち、仲間を見て身体のぶつかり合いの中で闘争心を燃やし忍耐する。
相手チームと合わせて30人のぶつかり合いが始まる。それも厳格なルールに基づいたフェアプレーだ。
一歩でも前にボールを送る。そのために全身全霊をかけてタックルをする。
弱音を吐かない、どんなに辛くても前を見て、どんなボールも拾い、忍耐するスポーツだ。
ラクビーの当て字は「楽苦備」だ。
ビジネスや社会生活にもルールはある。
スポーツは共通のルールで戦う。そこにはごまかしはない。
ビジネスや社会生活での共通ルールは「私利私欲でマイルールを作らないこと」だ。
身心を統一して誠実な言動をすることが求められるし、それが最強のフェアプレーの精神に違いない。
昨日『易経』の「沢山咸」を学んだ。
「咸」=「感」、感通、感動、感化、感触といった意味で、「二気感応して以て相与するなり」二気とは陰と陽であり、これは互いに反発しあう性質だが感応し合うと万物化成する。
すなわち新しい命を産むということだ。
人間ならば人を感動させ天下に和平をもたらすというのだ。
それには二つの条件がいる。
1.時中(時が中(あた)る):春に種を蒔くように時期を間違わない。中は中庸の中である。
2.明鏡止水の真っ白な心でいる。
心とはころころ変わって感応の邪魔をする。
格言に「心こそ心惑わす心なり 心に心許すまじき」というものがある。
『易経』は3000年前の最古の本であるが、この本質は大自然の法則に従うことを教えている。
人間の意識による作為的なことを取り払うのが明鏡止水の心境だ。
ラクビーはスポーツというルールの中での体当たりなどの過酷なプレーに感じる人間としての弱さ・脆さを知り、その中で自分の精神を強靭なものにしてくれる最高のスポーツだということだ。
二気を男女に捉えるのも、二気をラクビーの相手方と捉えるのも良し。
この気が合えば与えるし、合わなければ反発しあう。その反発の中で自分の人格を磨く。
まさに、ビジネスでも同じことが言える。ビジネスにおいて売り手の利益と買い手の利益は反発するが、忍耐力を持ってタフな精神で辛抱強く適正価格でビジネスを成立させるのと同じだ。
みなさんはスポーツで人格形成されていますか?