大阪石材社長ブログ

「地球儀を掌に乗せて考えろ」

投稿日:2022年9月6日 更新日:


タイトルの「地球儀を掌に乗せて考えろ」ということを教えてくれたのは、創業して10年で70億の会社をつくった社長だった。
私が社会に出て二度目に就職した会社の社長で、直接商売を伝授してもらった。

ある時、その社長に「君は商売をするにはどこでやるのがいいと思うか」と問われた。
1970年の後半には100万都市構想ということで堺の臨海地区の工場から移転して、公害のない街にしようという構想があったので、私は「堺方面でしょう」と知ったようなことを答えた。
そうすると社長は即座に「私やったら阪急百貨店の中か近くで商売する」とおっしゃったので、「なぜですか?」と質問した。
「商売は、一番はロケーションだ。人の往来が多いところがいい。」
「阪急電鉄、阪神電鉄が毎日何十万の人を運んでくれているではないか!」とおっしゃられた。
私は「弊社はまだ十年ぐらいの社歴で知名度もなく資本も充分とは言えないので土地を買うことも借りることも出来ません」と答えたら、「君はなぜやりもしないのにだめだと言えるのか?」と質問された。
これには答えられませんでした。

社長は今後の構想として、団塊の世代が結婚して家が欲しくなることを見越してマンション建設をしようと考え、私に事業計画を練って企画しろと指示したが、全くの素人で何から手を付けていいか分からず悶々としていた。
ある朝、社長「企画書はできたか?」と言われ、「土地を探すことから始めるつもりですがどうしたらいいかと思っています。」と答えた。
「どこに建設するつもりか?」と問われた時には、すでに阪急沿線の西宮芦屋周辺と見抜いておられた。
土地の探し方のアドバイスとしては「阪急沿線を一駅ずつ降りて、不動産屋に名刺をまいてくることだ」と言われそのようにすると、3日もしないうちに情報が集まりだした。
さてそれからは、新聞折込みのチラシを丹念に調べて販売価格の平均を出したり、地図にマークを打って競合の物件より良い企画を練った。
良い物件があれば、都市計画法に適うように容積率を出して販売戸数を決め坪当たりの単価を設計事務所に聞いた。
外観は現在建っているマンションの写真を撮って参考にして真似をした。
資金は山林の土地をたくさん持っていたので、担保として交渉するというやり方だったが、二束三文の担保ではなかなか貸してはくれない。
結局1978年のオイルショックで会社更生法を余儀なくされて、実現しなかった。
(後日談だが3年ほど更生手続きで運営をやっていたら景気が良くなって、土地が値上がり30億ほどの含み資産ができた。)
社長は自分が事業始めるのにつけて情報が一番と考え、大会社の社長の運転手になったそうだ。

「地球儀を掌に乗せて考えろ」という意味が当時の私は分かっていなかった。
社長は日銀の支店長の食事会に出ておられ、金融の話を良く朝礼でされていた。
日本だけ、業界内だけで考えていたのでは方向を見誤るということが言いたかったように思う。
その後の土地の値上がりは決してラッキーでなく、1989年のバブル崩壊までの日本人の土地神話が崩壊するのが予言できていたように感じる。

最近盛んにグローバル化、ITによる情報化と言われているが、当時一般サラリーマンだった私は、自分の視野が自分に関することと目の前の仕事だけだった。
よく社長に「自分の財布で考えるな、相手の財布で考えろ」と言われたもので、金銭感覚が自分の給与を超えると怖くなった。
だから、怖くならないようにするには自分と関係ないと「他人事」にする。
経営だとか国家だとか世の中の流行について深く考えても生活が変わらないし、直接関係があって給与が上がるわけでもなく、世界を俯瞰する視野が全くなかった。
しかし、社長はすべての出来事を「自分事」として受け止め視野を広げることを教えたかったように今になって感じる。
いつも紀伊国屋に行って本を買わされ、一週間に10冊は本を読まれていた。

世界経済は産業革命後イギリスが親父で資本主義が始まり、1900年代にアメリカの長男が頑張って、戦後は日本が次男として頑張っていたが、今は中国に座を奪われただけでなく、自由主義と民主主義でなく専制主義と共産主義を標榜する国との関係となっている。
一方でロシアがウクライナに侵攻して戦争になっていることで、原油価格が上がり、小麦などの穀物も値上がりし、消費価格の値上げが昨年は2.4%だったそうだが、今後も目が離せない。
われわれも海洋運賃の値上げやコンテナの値上げによるコストインフレになっていることも確かだ。
地球規模の経済安保の時代が到来してきたのを実感する。
日本人の底力で食料自給率を上げ、知恵と具体的な行動で未来を開いていくチャンスが来ている。

みなさんは地球儀を掌に乗せて自分事で考えておられますか?

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