過日、最も感情を表現する職業は裁判官だということを聞いた。
法というルールの中で理性的に判断し、私情を入れない職業と思いこんでいるのが一般的だ。
今朝の日経新聞の春秋に「東海大安楽死事件」の記事が書かれていた。
末期がんの患者を苦しみから解放するように家族に頼まれ、薬物を投与し、殺人罪に問われた。
当時の松浦繁裁判官は安楽死の四つの要件を満たさないと、執行猶予付きの有罪判決を下した。
法廷でうつむく医師に「再び医療現場に復帰することがあれば、患者と家族の双方の心の声を汲み取る医師になってほしい」といった。
これが後に問題となり、訴訟当事者の感情をを傷つけたと、東京高裁の裁判官が戒告処分を受けた。
法の番人として厳格でなければならない事は承知だが、大岡裁きのようで人情の機微がある人柄には好感を持つ。
さて、話は変わるが、経営を科学的に追求する事は悪いことではないが、そこにヒューマニティーという人間味を入れたのがトヨタのTQC運動の「看板方式」、PDCAの「改善」運動だ。
アマゾンが競争社会を徹底的に勝ち抜いて、非競争を創る世界観を持っている。
しかし、アマゾンを苦しめたスニーカーのネット販売企業は自社に在庫がなくても、「どこどこのサイトで買えます」とかゆいところに手が届くビジネススタイルで、顧客の信頼を勝ち取った。
AIやIoTと競争する事でなく共存する道筋を創造する事だ。
そこには、科学と人間の融合が欠かせない。
経営に人間らしく創造力を働かせ、人間の魂が入った創造性に満ちた改善改革を楽しむ人財育成が必要だ。
法を守る事は重要だが、松浦繁さんのような暖かい「情」というスパイスと融合させ、現実の課題を解決しながら発展もさせ、楽しくもある自立した創造する働き方が望まれる。
理論物理学者の恩師小田切瑞穂先生に高温高圧の「核分裂」では、放射能の処理問題が解決されないので、低温低圧の「核融合」を提唱されていた。
人類が今果たさなければならないのは、科学と人間の融合路線だと確信する。
それには、唯物弁証法と史的唯物史観を乗り越える哲学観を必要とする。
恩師は「潜態論」と自分の哲学を標榜して孤高に生きた。
皆さんは科学と人間の融合いかが考えますか?