商人の心

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商人の心
『損して得とれ』というのは商人の心構えである。
この解釈は二つある。
1)最初は安くして置いて、常時買ってもらえるようになったら値段を上げておくという、
  小賢しいテクニックと考えるのは、自分に利益を得ようとする悪智慧である。
2)商いをするときの自分の心構えが第一利益でなく、自分の欲心をなくし、
  万物一体の心になる人を救うは天道であり商いでありと中江藤樹が言ってる。
  『貪るは得に似たる損なり、廉は損に似たる得なり。』
  貪=むさぼる、限りない欲望、利己心発想、自分さえ良ければいい
  廉=むさぼらない、私欲を第一義とせず役立つ行動を第一義とする、利他心発想、自他共栄

橘南谿(たちばななんけい)の『東遊記』巻之四、
南谿さんは医者、諸国を旅修行に出て天明五年(1785)に藤樹書院をたずねたときに、
村人から聞いた話を紹介しよう。

飛脚が二百両のお金を忘れる話だ。

「加賀(石川県)の飛脚が金子二百両預かりもって京都にのぼる途中、
江州(滋賀県)河原市より軽尻の馬を雇って、榎木の宿にいった。
馬方が河原市に帰り、馬のすそを洗うと鞍の下から財布が出て、見ると二百両はいってる。
驚いて『さっきの飛脚の取り忘れたものに違いない』と榎木の宿にいって、詳しく聞いて
間違いないのでお金を返した。
飛脚は死んだものが再びこの世に生き返った心地して、行李より十五両を馬方に与えようと、
涙流して喜び受け取るように言ったが、馬方は『そんなお金は受け取れない』と断った、
すると十五両が十両、十両が五両と減らし、ついに金二歩なった。
馬方はそれでも受け取らなかったが、
相手の気持ちを治めるにはと、ここまで来た賃銭を二百文なら受け取るという事になって、
お酒を宿のみんなに振舞って飲んだ。

そこで、この飛脚が尋ねた。
『それにしてもあなたはどういうお方なのですか?』

馬方は、
『自分は名の知れたものではございませんし、また何も知らないものです。
ただわが在所の近所の小川村というところに、中江与右衛門(藤樹)という人がおられて、毎晩講釈をなさってます。
私も時々言って聞いてますと、親には孝行を尽くしなさい。主人は大切にするものである。人のものはとってはいけない。無理非道を行ってはならない。などということを常々話されてます。
今日見つけた金子も自分のものでないので、取るべき道理はないと心得たまでの事です。』

1607年に生まれられた中江藤樹先生の時代より、
はるかに進んだ時代に住む私たちに教えられてる気がする。

戦後科学主義だの近代合理主義だのと理論だの個人主義だと、
利己主義を正当化する社会になってしまったように感じるのは私だけだろうか!

商いの原点はお役だちだと、売上高=お役だち高とよんだ松下幸之助さん、
因果の法則が貫くと『動機善なるい私心なかりし』と利他行を進められる、
稲盛和夫さんなどのビジネスのスタイルがある。

温故知新、今こそビジネススタイルの基本をしっかり持つべき時期がきてる。

みなさんは商人の心をどこでどんな人から感じられてますか?

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