「心の荒廃の時代」に思う

投稿日:2021年3月25日 更新日:

いま日本の自殺者は年間3万人を超えようとしている。
もちろんコロナ禍での自粛によることも原因の一つである。
しかし、自分の思いが通らないと嘆く自我意識の未発達さが原因であることが多いように感じる。
心が子供じみているのである。大人になりきっていないと言ってもいい。
誰でも、青春期から大人になる段階で社会という壁にぶつかり、もがき、疎外感を感じる。
そして、少しずつ社会を体験し学ぶことを覚え、自らの世界観を創造し始める。
体験と小説や文学、芸術、宗教、哲学に触れ、自問自答しながら成長していく。

ところが、数か月前の1ヶ月の自殺者統計では男性が1700人ぐらい、女性が500人超えたということになった。
男性は中年男性が多く、女性は若年層と50歳前後の熟年層も多くいるそうだ。
こんな風に書かれていると、マスコミは全てを貧困が原因にしてしまう。
過去を振り返ると、60年ぐらい前にはこんなに自殺者はいなかった。
それもまたマスコミはマクロ的に経済が成長期だったからと結論づけるが、おせっかいなおばさんやおじさんがいて話を聞いてくれる助け合いの村社会があった。
マスコミは一貫して唯物論的な視点で環境のせいにし、政治を悪者にする。
その見方のすべてが間違っているわけではないが、合っているとも思わない。
人間として群れて仲間が助け合う。
新自由主義の下で経済はグローバル化し、男女平等の名の下に女性が社会に進出し、結婚しない人々が増えて、一方では65歳以上の人口が3000万人もいて、これも単身者になっているのが現状だ。

世の中で自分で自分自身を創造していかないといけないのに、心の在り方を学ぶところがないのも事実だ。
唯物論者は、宗教は観念論だと排除する。
マルクスの「宗教はアヘン(思考停止)」という言葉尻だけを引き合いに出して主観主義者と決めつける。
唯物論で議論している「心」とは「意識」のことを指しているが、人間は意識と無意識の世界で生きているし、もっと言えば無意識を否定した無無意識の世界があると教えるのは東洋的な世界観だ。
私は人間に一番大事なものは心を磨く学びをすることだと信じている。


しかし、高度に発達した資本主義者社会では経済活動という具体的なことをしなければ生きていけない現実がある。
人間は矛盾(利己と利他)した存在であり、同時に不完全な存在でもあると芳村思風さんは言う。腑に落ちる。
そこでハイブリットな人間を目指し、物質的なことと同時に心を高めること、魂を浄化することこそが一番に重要だ。
しかし、学校では教えてくれない。(江戸時代は寺子屋で四書五経を教え、道徳観や倫理規範を躾けた)

    唯物弁証法            唯心弁証法
原因 対立物の相互浸透の法則       物心一如
過程 量質変化の法則           冷暖自知
結果 否定の否定の法則(二重否定は現実) 無無我(自我も無我もない我=霊、神、仏、気)

この分析表は屁理屈だが、「心を高め、信念になるまでさらに高めたら、運命を変えられる」というのは稲盛和夫さんだ。
因果法則が少し優位に働くというのである。
さらに五木寛之さんは「経済や政治は何も心配しなくていいが、むしろ心配なのは日本人が体験する命の軽さ、心の荒廃だ」という。
私も同感だ。幸いなことに若い頃に出会った恩師小田切瑞穂は臨済禅を教えてくださった。

さて、欧米のような先進国が人種問題や貧富の格差問題で苦しんでいて、心理学や脳科学が発達してきている。
彼らの論調はネガティブ、ポジティブ論議で心を外から操ろうという思考だ。
ジークムント・フロイトはネガティブな感情を抑えようと葛藤するエネルギーが行動と結びつくと心が和らげることができると考えたが、最近の学者のマーティン・セリグマンは逆にそうではなくポジティブな特性に着目し自己実現へサポートするのが心理学者だと能動的に働きかけると結論付ける。
しかし、あくまでも対象を治す人がネガティブ、ポジティブを決めるやり方だ。
東洋的には道元の「冷暖自知(れいだんじち)」、自分で現実に飛び込まして体験させるという考え方がある。
自分の内面に飛び込み自問自答させるのである。実に面白い。

稲盛さんは「思いは必ず実現する」という。そのためには、心を高め信念化するまで思い描くことだ。
思いが善であればあるほど天が味方して、行動すればするほど現実化するというのである。
30代の若き経営者稲盛さんが松下幸之助さんの「ダム経営」の話を聞いたとき、会場の中小企業の社長から松下さんに次のような質問があった。
「私たちは営業もし、現場もやり、経理もするから忙しい。松下さん、ダム経営するにはどうしたらいいか教えてください」
こう問われた松下さんは「まずしようと思わんとあかんわな」と答えたそうだ。
これを聞いた稲盛さんは「これが思いを意識し、潜在意識にまで届かせ、信念化する。徹底した思いこそが原動力だ」ということを覚ったのだ。
「人事を尽くして天命を待つ」だ。

それにつけても、命が軽くなり心が軟弱になり仁義がなくなった日本が世界に尊敬される国になるかが疑問だ。
もちろん経済の進化の方向性もしっかりと構築できる人財を育成する必要が急務に感じる。

皆さんは心の荒廃いかが思いますか?

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