欧米人の心遣いに「ハグ」をすることや「握手」をすることなどがあるが、これは敵対しないという具体的な証である。
日本人は「頭を下げて礼をし、少し距離をとる」ことで、相手に敬意を払って控え、謙虚さを具体的に表す。
文化の違いと言える。
江戸時代の幕府が武士に学ばせたのは「朱子学」である。(南宋時代の朱熹(しゅき)が構築した学問で、「性即理」と言って知識を得てから行動することを説く)
幕府として民を統制するための学問として「格物窮理(かくぶつきゅうり)」の理論で帰納的哲学が必要であったのだろう。
一方、明の時代の出てきた王陽明の「陽明学」は、「心即理」と言って心がはっきり分かれば、書物に自然に理解できると説いた。(『伝習録』下17)
つまり、心は万物一体と説くのである。演繹的創造の哲学観である。
どちらが正しいというのでなく、どちらも生かせればいいのである。
さて、心遣いと言えばコロナ禍での対応の違いで、欧米ではパンデミックが激しくなっているのに比べ、日本は感染者数が減っているのが事実だ。
なぜそうなるかを感染症を専門とする医者が科学的に説明しようとしているが、的が外れているように感じる。
1.人流を避けて大人数の移動をしない説(しかし、緊急事態宣言解除後、人流は元に戻っている)
2.感染者が減ってウイルスが弱っていっているのだという説(根拠がはっきりわからない説明)
3.ワクチン投与がだんだん行き渡ってきたという説(諸外国では日本より接種率が高い国もあるが感染者は増えている)
私は、上記のような理由ではなく、文化の差を理由として考える方が妥当のように感じる。
感染対策に繋がる日本の文化として以下のようなことが挙げられる。
1.箸で食べる習慣がある
2.食事の観念が命を頂くという意味を持ち黙食する。(残さないで黙って食べる習慣)
3.一定の距離を保って人と人が接する習慣(ソーシャルディスタンスができている)
4.毎日お風呂に入る習慣がある(清潔好き)
5.家では靴を脱いで生活する習慣(畳文化)
心は見えないが、こんな心遣いが見えてくる。
欧米とは生活習慣や文化が違う。
どちらが良いとか悪いとかでなく、そうしないと生きてこられなかったことと、自然に対しての受け取り方を、克服ととるか自然に沿って生きるととるかでも違う。
日本の気候は高温多湿なモンスーン気候で雨も多く自然に恵まれていることによる。
王陽明の「四句訣」を紹介する。
善なく悪なきは是心の体
善あり悪ありは是意の動
善を知り悪を知るは是良知
善をなし悪を去るは格物
王陽明は「修行なんかしなくてもいい、日常の生活の中で『事上磨錬』せよ。そうすれば必ず『致良知』で良知を実行することだ。それでこそ『知行合一』だ」と説いているのである。
しかし幕末の志士たち、西郷隆盛や高杉晋作らは陽明学の創造的な哲学によって時代を切り拓いていこうとするが、みんな明治維新に倒れていくのも事実だ。
皆さんは心見えませんが心遣いどうされてますか?