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「合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)」に思う

投稿日:2021年11月4日 更新日:

「合成の誤謬」とはマクロ経済学で使われている言葉であり、例えば「私たち一人一人が正しいと信じて行動をとっても、国全体として好ましい結果にならない」ことがあるように、経済的な循環で言うと日銀がどんどん金利を下げ金融緩和をしているにも関わらず、日本の経済成長は欧米に比べて飛躍的な成長はしないことが挙げられる。
この理由のひとつには日本人の気質である貯蓄癖がある。
経済的にはお金が循環すると経済発展に繋がるが、停滞して預金になるのはその逆になる。

さて話は変わるが、資本主義は欧米で考えられ、1989年のベルリンの壁崩壊後は社会主義より素晴らしい仕組みだと信じられてきたが、その反面、アメリカに象徴されるように富の格差が広がるのも事実であり、個々人の利己心を是認し、倫理観が欠如していると考えられていた。
ところが、経済学者の岩井克人(いわい かつひと)さんやイギリスの法哲学者のH.L.A.ハートの「法の概念」(1961年)などではまさに合成の誤謬が働き、実は倫理的なのだというのである。
アダム・スミスは利己心を肯定し分業によって生産力を向上させるが、公平な観察者(見えざる手)言い換えると良心が調整すると言う。(カントは「天の法廷」と呼び人間の法廷とは違うと考えた)

契約には以下のように2つの関係がある。
1.対等なもの同士の契約関係(互いがWin-Winになる)
2.非対等なモノの信任関係(例えば、医者と患者[精神病や、認知症])
問題となるのは非対等な関係にある場合で、医者と患者の場合は患者は一方的に医者を信じなければならないが倫理観のない医者にあっては困るというので、イギリスやアメリカでは信任法というのが制定され、医者には「忠実の義務」が課され嘘をつくなということになっている。
もちろん会社の社長や役員も同様に忠実の義務が課せられている。

ということは、利己心で突き進んでフェアープレーで競争し利益を出すことは是認され、結果的に社会全体を成長させ税金を通じて豊かな国になるというのと同時に、資本主義の根幹は倫理観を内に秘めていることになるのである。
まさに、合成の誤謬である。
ハート氏は信任関係の中心には「倫理」としての忠実義務が厳然と働き、信任関係は倫理を内面化していない悪人の行動も制御し、迷っている人や無知な人の行動の指針を与えることによって倫理を補完しているという。
契約の主体となれない人も信頼によって他の人に仕事を任せることが可能になるというのである。
その後の行動で、利己心のみで倫理観の無い行動すれば背任や横領罪となることは必定で、「信任による信頼関係」は成り立たない。

資本主義は拝金主義者・守銭奴という悪人の世界と思い込んでいたような自分がいる。
人生の手段としての資本という立ち位置が良いと思う。

皆さんは資本主義に倫理が根本にあったとご存じでしたか?

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