「価値ある自己になる」
常岡一郎棟梁の言葉である。
「一万人を支配することを願う人は多い。
しかし、一万人の人から仰ぎ見られる、
価値ある自己になることを心掛ける人は少ない。
万人の親しみと尊敬を集め得るほどに自己を磨き上げること、
自らの不備、不徳を強く反省する事が、人生の基礎を固める道である。」
論語に「知好楽」という言葉がある。
知ることより好きな事の方がよく、
好きより楽しんでやる事が良いという意味だ。
私はさらに「遊ぶ」というのがもっと良いと思っている。
しかし、遊ぶにも、遊ぶものがいるし、遊び方もいろいろある。
このように考えを進めるのが現実的だが自己中心的な狭い考えでもある。
常岡棟梁は違う。
「一万人から仰ぎ見られる価値ある自己になる」
言い換えると誰もが認める棟梁を目指した人なのだ。
この人は頂点を目指しているのだ
私には腰が引けてしまうぐらい大きな志をもたれたと感心するとともに、
自分の小さな料簡や志の低さを反省させられた。
張ったりなら言えるが、人前で堂々といえない自分がいる。
それなりの行動をしなければ、誰も信じてくれないことが解っているからだ。
常岡棟梁は「自分に厳しい人」である。
先日、料理番組を見ていたら、
まな板を食材によって変えるといってました。
また、ごま油は60度で香りが飛ぶので、
料理の仕上げにフライパンの回りにかけ火を止める。
やっぱりプロは違うな!
ある面から言うとトコトン味にこだわって食材も料理法も調味料も最高に生かす。
拘るのは自分に対してでなく、料理を食べる人に素材を生かし最高の味を提供する。
まさにプロの料理人は「一万人から仰ぎ見られる価値ある自己」に挑戦する人なんだ。
省みて、私はそんな自己を日夜磨いてるか自問自答すると、
随分、気楽で適当に生きてるようでもったいないと反省しかない。
大きな志抱いて、張ったりを言わないという謙虚という美名の怠惰かもしれない。
皆さんは一万人支配したいですか、一万人に仰ぎ見られたいですか?