「商人道は日本独自の成功哲学」

投稿日:2021年9月15日 更新日:

リーマンショック以降、新自由主義(フリードマン)のような自由放任的な経済活動は、金融の投機的な方向へ行ってしまい現実の世界同時不況を招いた。
このことからアメリカ型の経営が見直され始め、ハーバード大学では日本人論や日本史教室、東洋哲学などが学ばれ始めている。

その中でも石田梅岩(1685~1744年)の「都鄙問答(とひもんどう)」に示されているように、商人の利益は武士の禄に同じだと、道徳観というより当然の権利と喝破し、商人道は人格創造と経済創造を両立させる日本型経営の成功の哲学だと志を貫いた。
江戸時代末期には多くの商人が学問を学んで、仕事を通じて人格形成を旨としたのである。
梅岩とは別の組織で、大阪上本町の誓願寺にも懐徳堂という学問所ができて中井履軒(りけん)らが指導した。今は大阪大学が中井家から会を引き継ぎ維持し主宰しているが、私はその会員であり、論語を加地伸行先生に学んでいた。

さて、「道」というと剣道や茶道というように哲学的な意味が込められている精神的に奥深いものと考えがちだが、「道」=「人生デザインの学習システム」とおっしゃられる人もいる。
言い換えると「自分の人生を幸せにする学習科目と」いうように、最高の自分になることが最高の幸せを産み出すことなのだ。
江戸時代では茶道は人格創造の最高の道だった。
茶道は裏千家の業躰(ぎょうてい)さんの泉本先生に学び、合理的な中に優雅さが組み込まれ、正客にはおもてなしの心で接遇する。
一期一会の和敬清寂を味わう。小さな茶室で全宇宙を感じるのである。

近江商人の「三方良し」は自分の自我意識から相手に役立つ利他意識へ、さらに世間という社会全体への公的利益を考えることであり、公人として私心をなくすからこそ経済創造になると同時に人格創造になるのである。
世界はSDGsと言って持続可能な発展を目指して17の項目を上げて取り組もうとしている。
日本では社会的な還元投資として近江商人は「お助け普請」と言って、宮大工や石工などの技術者を使い、技術を進化させるとともに、神社や寺の新築や改築をして寄付していて公共スペースを造っていた。
循環型の商人道が出来ていたことは間違いない。

ところが明治になって欧米の圧倒的に生産力の高い技術や科学を学ばなければならず、日本型の人格創造と経済創造の経営より、富国強兵を旗印に物量的な生産力の方へシフトしていくのである。
鉄道や蒸気の動力を使う生産の工業化が進んでいく。

さて、リーマンショック後も低迷が続く日本の経済が工業化による効率重視や量産制から脱却し、質の世界へ価値観を転換するときが来ている。
これは人間が人格を養う勤勉な働き方をすることを意味する。
現代の日本では梅岩が言ったような人格創造と経済創造のハイブリッドな経営が望まれている。
利他行一番。世のため人のために原理原則を守るという哲学こそ、現代の商人道だと確信する次第だ。

皆さんの日本的経営の商人道いかが思いますか?

-経営, 経済
-