写経が生きる

投稿日:2012年3月11日 更新日:

写経が生きる
奈良・薬師寺で「まほろば塾」が毎月開催されている。
写経勧進で西塔、金堂、講堂、玄奘三蔵堂を建てられた。

聖武天皇の時代一木一草を持ち、延べ260万人によって作られたのが東大寺大仏だ。
その心根を同じくして薬師寺は戦後、伽藍の復興をなしてきたのも、
写経と故高田好胤管主の三越で行われ辻説法だ。

今回も東北の震災に現在の山田法胤管主の発案で、
写経をして亡くなられた人の供養をしてもらおうと呼びかけられ実施。
薬師寺は興福寺と同じで法相宗で教義は『唯識』で、
「心のあり方がすべてを決める」という教えだ。
自分の心のあり方が原因となるので、心を整えることを第一義と説く。

『右は極楽、左は地獄 心一つが道しるべ』こんな句がある。

震災の心の傷は今も大きく残された人に重くのしかかっている中で、
墓も流され、家も仏壇も無く、お寺さえ流された人にとって写経勧進ができることは、
家族や先祖、友達への供養となり心を取り戻し感謝の念をよみがえらせたそうだ。

水産加工業をしていた、つだやすなりさん「きぼうのかんづめ」のなかに書かれているのは、
何もかも水に流されひとつのかんづめが残っていて、ふたを開けると食べられる鯖のみが入っていた。

そのとき『あの日、津波に流されずに、残ったものがあった。それは希望だ。』
こんな話を塾長の安田暎胤長老が話されて心打たれた。

自分のことより先祖のこと、自分のことより亡くなられた家族のことを気遣う心。
人間はなんとすてきな魂を持っているのだろうと思うが、現実の経済の不況にあえぐ人もいる。

塾長は東北震災だけでなく、生活の先行きの見えない現状に苦しむ人に松下幸之助さんの言葉を引用された。
 
松下幸之助いわく
『起こってしまった現実から、われわれは逃げることができまへんのや。
 あるがままの現実を素直にまず受け入れんとしょうがないわな。
 人間の知恵だけは無限や。
 知恵はだそうと思ったらいくらでもでる。
 解決の道はいくらでもある。
 不況はチャンスやで、不況やからこそ、新しいものうまれるやないか。
 不況やからこそ人も育つ。』

松下さんは『素直』これを一番大事にされ、門真のパナソニックの敷地内に素直神社があるそうだ。

素直には二つある。
1)事実のおこたったこと自分にとって良くても悪くても100%受け入れる〔厳しいな。できるか〕
2)事実にしたがって、自分のことを正直に表現し、判断の基準を良心や『お天とさん』に任す。
 〔これは決して開き直ってるのでも無責任にほったらかしにしてるのでなく、自分の我欲で判断しない〕

素直だけでは現実を乗り越えるエネルギ-には弱い。
人間は自分を信じ未来を信じ、心の中の絶望を排除して希望で一杯にすれば、
エネルギ-は未来へ爆発し行動する。

写経勧進が希望の光になって復興が現実に一歩づつ着実に歩むことを願う。
薬師寺で写経された浄財は復興資金として蓄積されるそうだ。〔ここ一、二年?〕

みなさん「写経が生きる」と思いませんか?

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